自己啓発セミナーというか新興宗教に片足突っ込んだ話

宗教はデリケートな問題なので、知人との話題になるまでは少し億劫だ。

今回は私が体験したちょっと特殊な宗教体験談をまとめてみようと思う。

主人(当時は結婚前)が友達の紹介で訳のわからない自己啓発セミナーの合宿に参加した。

(アメリカでも無名の団体なので、きっと知っている人はほぼ皆無だと思う。無論、日本には進出していない。)仏教にインスパイアされた新しい哲学とムーヴメントがなんたらかんたら、小難しい単語を並べながら、とてもエキサイトした様子で私に感想を聞かせてくれた。正直、言ってる事の意味が半分以上理解できない。僕たちが今ここで立ち上がらなければ!と、ニューヨーク市長にでもなったのか?と思わせる、ただならぬ責任感を抱いていた。その責任感、家庭内でも生かせてくれればもっと助かるのに。

お分かりの通り、主人は完全に洗脳(マインド・コントロール)されていたのだ。

そして、数週間後に行われる初心者向けのレッスンに君も参加するべきだ!と鼻息荒く語り出したのだ。レッスン料を聞いて驚き、週末2日間の授業でなんと$200(日本円では16000円位)もするのである。ブラジリアン・ワックスでマXコをツルツルにした方が実用的ではないか。おっと、失礼!

私「まだ研修の身で残業代も付かない状況、そんなお金出せない。」

夫「じゃあ、僕が半分出すから!」

半分かい!

それはさて置き、半分出すかどうか以前の問題である。主人は洗脳されているのだ。

もう20年近くも前になるが、日本を震撼させたあの某新興宗教を思い出した。

話を聞いていると類似箇所が多過ぎる。

☆本山は田舎の何もない場所で、教祖のオッサンを取り囲ってコミューンで生活している

☆教祖が決めた、毎日やるべきエクササイズ、瞑想の時間がある。

☆瞑想の時は教祖が決めた呪文を唱えなければならない。

☆年会費を払い、教祖に献身すればする程レベル(階級)があがる

など多数。

怪し過ぎる。

詳しい事は面倒なので聞き流していて覚えていないが、インド仏教にインスパイアされてなんとかなので、類似点仕方ないと言えば、仕方ない。私が趣味でやっているヨガの先生たちも、師匠に付いて合宿に行ったり呪文を唱えたりしているので、見る人から見れば十分怪しい。しかしだ、何が決定的に違うかと言うと、実在する教祖を盲目的に崇めている所だ。ヨガの先生たちは自分の師匠がいるものの、根本的にクリシャナやら象のオッサンの神様(ガネーシャ)やら、なんやら、詳しい事は知らんが現世には存在しない神様やお釈迦様を信仰し、何百年も語り次がれているマントラ(例のヨガの呪文)を唱えたりしている訳だ。

私「洗脳されてるで、自分。」

夫「君は何も分かっていない!レッスンを受講もせずに善し悪しを判断するのか!!世界は僕たちの手に掛かっているんだ!君には失望した!」

嫁一人食わせられない男が全世界の責任を背負おうとしている、身の程を知れ。

ともかく、主人は発狂しだしたら手に追えない。何も言っても聞く耳を持たない、自分が世界で一番正しいと思い込んでいる。私がいつもわざと折れてあげて解決しているのだ。

さすがに今回ばかりは折れる訳にはいかない。

しかし、口論に口論を重ね、私も泣きながら反撃したにも関わらず言い負かされてしまい、結果的にまた私が折れてあげたのだ。我ながら仏の次に寛容である。

今思えば、この時に別れておくべきだった。

こうして、初心者向けセミナーに強制参加させられたのだ。

セミナーはランチ付き、一日6時間近くのレクチャー。

教祖・ジョニー(仮名)が小難しい単語を並べながら話しているビデオ・クリップを見せられて、

それについての付加説明を授業担当の生徒2名が加えてくれるのだ。

気になる内容はというと、簡単に言えば仏教の概要を西洋人向けに噛み砕いて分かり易く、英語で説明している。

プラス、教祖独自のスピリチャルなアイデアが融合され、世界を救う為に新しいムーブメント起こさなければ、なんたらかんたら、という事だった。私も英語が100%理解出来る訳ではないので意味不明な内容が多かった。大学の講義が100倍簡単に思えるくらいに理解に苦しんだ。授業の終盤は、ビデオでジョニー(教祖)が映る度にイライラし始めた。いや、オッサン、それ仏教の二番煎じやないか。

私の親は「なんとなく仏教徒」なので、私も「取りあえず仏教徒」の家庭で育った。人が死んだら寺から坊さんを呼んで葬式をする。正月は神社にお参りに行く。結婚式はバージンロードを歩きたいので教会で挙げたい。宗教?細けえ事はいいんだよ!恐らく、日本人の大半が私と同じバックグラウンドで育ったと思われる。その中でも、私たち文化の一部である仏様の教えは、日々の生活から自然と頭に入っているのだ。私のスカスカの脳みそでは説明が出来ないので、http://hachisu-net.com/issei/kiso.htmlのリンクを見て頂ければ「ああ!」と思う方も少なくないであろう。

しかしながら、私の主人を含む西洋人は、仏教に関する基礎知識がゼロに近いのだ。

キリスト教やユダヤ教の両親を持つ人が多く、仏教の考えは西洋の宗教とは180度違うので物珍しい。この西洋人の、仏教に関する知識の薄さにつけ込んだのが、他でもないこの教祖なのだ。

やり方が徹底的にあざとい。目の付けどころが良かったらしく、今となれば数千人の生徒を抱える教祖となった訳だ、ある意味、敏腕のビジネスマン兼カリスマティックなスピリチュアル・リーダーである。この教祖、アメリカとヨーロッパを中心に飛び回ってレクチャーを開催しているらしいのだが、何故か日本・韓国・中国・タイ・ベトナムなどのアジア圏にはレクチャーに来ない。理由は「彼らは仏教のバックグラウンドで育ち、その固定観念から抜け出せないので僕の教えは理解されないから」らしい。理解されない=講演に人が来ない=カリスマになれない。納得である。モルモン教徒の皆様は、理解されようがされまいが、自分たちの宗教に絶対的な自信とリスペクトがあるので日本でも積極的に活動していると聞いた。本気で布教するつもりなのであれば、理解されようがされまいが彼らの如く活動するべきではないのか?

教祖・ジョニーの経歴とエピソードを追ってみると、更に胡散臭さが浮き彫りになった。

☆白人

☆厳格なキリスト教(ローマ・カトリック)の家庭で育つ。父親が神父。

☆1970年代にミュージシャンを目指していた

☆インドへ渡り、仏教に魅了される(要するにビートルズの真似事)

☆仏教と自分の考えを融合し、新しいムーブメントを起こすリーダーとなる事を決意

☆「趣味で」バンドを組んでおり、定期的にライブを開催している(もちろん生徒は熱狂的ファン)

☆教授が毎月発行する雑誌を読んでいなかった生徒を見つけた瞬間、キレて破門した

☆彼が発行した著書は、一人最低10冊買わなければならない。AKB選挙かよ!

要は、ミュージシャンの出来損ないが宗教リーダーとしてカリスマになろうとしているのである。売れた芸能人が政治家に立候補するのと同様、癇に障る。しかしながら、彼の話し方はヒトラーの如く人を惹き付ける魅力があるらしい。主人を含む多くの人達は、あのトーク・テクニックにまんまと騙されたのだ。あの上から目線の物の言い方、最初にビデオを見た時から私は全く気に食わなかったのであるが…。

セミナーに参加した後、主人に感想を聞かれたので、正直に「胡散臭いオッサンのたわ言」と答えたところ、また発狂しだしたのである。

夫「ジョニーの言っている事は至って論理的だ。このまま世界が沈んでゆくのを、君は見過ごしてしまうのかい!なんてこった!」

主人の脳みそが実に「なんてこった」である。

嫁一人幸せに出来ない男に心配されるなんて、世界も良い迷惑だ。

先程も触れたように、この男は一度信じ込んでしまうと断固として自分の考えを変えず、他人の意見を受け入れない。こうして、私も仕方なく、カルト地味た新興宗教の活動に片足を突っ込む事になった。

この話は、時をさかのぼる事かれこれ四年前である。

新卒であの旅行会社から内定を貰い、幸か不幸かNYに引っ越して来た当時の私は友達がゼロに等しかった。

日本人と働いているのでオフィスでも日本語、ルームメイトも日本人なので家でも日本語、要するに主人との電話以外は四六時中日本語で話しているのである。この宗教の定期ミーティングに参加する場合、英語を使って自分の意見を述べたり、相手の話す難しい英単語を聞き取らなければならない。少なくとも、良い英語の勉強になるだろうと自分に言い聞かせた。アメリカ人の友達を新たに作る為にも足しげく通う事にしたのだ。

私は真面目な性格なので、この日を境に定例ミーティングにほぼ毎週参加した。

当時は結婚前だったので、主人とは別で住んでいた。もちろん一人での参加である。

徐々に他の生徒にも顔と名前を覚えられて、仲間が増えた。

驚くことに、この宗教の生徒達はほぼ全員、ズバ抜けて頭が良いのに謙虚で我慢強く、心優しい人達ばかりなのだ。学歴と仕事だけがプライドで浮気ばっかりしている、エラそうなエリート駐在員オッサン共とは雲泥の差だ。超高学歴で高給取りの30代から50代の大人の生徒が半分以上。8割が白人、残り2割がその他人種といったところ。日本人はもちろん私一人だった。当時はまだ二十代前半で最年少だったので、可愛がってもらえた。年が近い生徒(と言っても30代前半)とは主人も交えて直ぐに仲良くなり、プライベートでも普通に遊ぶようになった。こんな素敵な人達が、何故あんなしょうもないオッサンを崇拝しているのか。私が毎週通えた理由は、この生徒達の人間性に惹かれ、もっと仲良くなりたいと思ったからだ。

オウム真理教を内側から捉えたドキュメンタリー「A」をご覧になった事はあるだろうか。

観た事がある人はお分かりかと思うが、この映画に出て来る主人公である荒木広報は、この宗教の生徒達が少し被る。荒木広報も、ものすごい高学歴で頭が良い上に、とても真面目で辛抱強い人物だ。ドキュメンタリーを観ている限り、到底悪い人には思えない、むしろいい人にしか見えない。オウムに入会していなかったら、もっと別の人生があっただろうに、と考えると悔やんでも悔やみ切れない(荒木氏からすれば、余計なお世話かもしれないが)

どうやら頭が良過ぎて、真面目過ぎる人はカルト宗教にハマり易いらしい。完璧過ぎて心に隙間が出来てしまっているのか。”rational”(道理をわきまえた)という仮面を被ったデタラメの教え (“teaching”) が論理的に隙間を埋めてくれるのだろうか。文章を読んで頂いてお分かりかと思うが、私がこの教祖にハマるには少々頭が悪過ぎたようだ。おまけに常にエロ妄想で頭がいっぱいという煩悩に溢れている。可愛い男の子を見掛ければ「一発やらせろ」と心の中でつぶやいてみたり、要は男子中学生と変わりない。自分のエロ脳と適度に馬鹿であることを感謝する日が来るなんて、思ってもみなかった。

そんな素敵なお兄さん・お姉さんが崇拝していたにも関わらず、私はどうしても教祖・ジョニー好きになれなかった。好きになろうと努力をしてみたものの、どうも鼻につく。やっぱり世界征服を企む詐欺師にしか見えない。

私がジョニーと、この宗教そのものを崇拝出来なかった一番の理由が、何かにつけて発生する料金だ。

少し大きなミーティングがある度に20~30ドル(1600円~2400円くらい)徴収される。

ランチミーティングで大したご飯も出ないのに3000円近く取られる事もあった。

そして、驚くのがこの宗教のイベントの多さである。

2ヶ月に1回は「特別な」ミーティングやインターネット・ストリーミングが行われる。もちろん有料。

ライブ・ストリーミングで教祖が6時間近くインターネット生配信でレクチャーをした事があったのだが、このストリーミング費用が一回150ドル(12000円くらい)もした。

料金は発生しないが、毎週木曜日の夜に電話ミーティングで今後の具体的な活動内容を話し合う。

面倒だったので「仕事を三つ掛け持ちしていて、寝る暇もないので参加出来ない。」と逃げていた。

まあ、嘘はついていない…。

年に一回行われる本山での合宿費用も年々上がり、二泊三日の合宿で$600(約48000円)も掛かった。

私が通っているヨガの先生が個人で行うヨガ合宿に参加した事があるが、一日2回のヨガレッスン、食事代、宿泊代(相部屋)込みで二泊三日で$270(約21000円)だった。オッサンのレクチャーが一日6時間近く、プラス食事代と宿泊代(しかも相部屋)でこの値段…ボッタクリではないか。もちろん、安月給を理由に本山への合宿の参加をばっくれた。

一番驚いたのが、海外への長期合宿である。

フランスのニースへ2週間に及ぶ「スピリチュアル」合宿、なんでも費用が$4000(約30万円)。

飛行機代や観光代は含まれていないので、全部合わせると$5000~$6000仕事である。

当時、主人はマインド・コントロールされていたので私とこの合宿に参加する旨を示唆していたのだが(私の分はもちろん自腹)、そんな費用はない上に、それこそ、あのカルト旅行会社が休みをくれる訳がないでしょう?と逃げた。

しかし、逃げられなかったイベントが教祖の講演会(レクチャー)だ。

参加費用、一回の講演で実に150ドル(約12000円)。私の通っているヨガ教室は月$79で行き放題なので、約2倍近い値段。この講演代ばかりは、さすがの主人も値段に納得いかなかったらしく、教団幹部に電話はEメールで直談判し、抗議していた。言うまでもなく教団幹部は「予算が少な過ぎて赤字なので仕方ない」の一点張り、まあ普通に考えて値段が下がる訳がない。雑誌の後ろの方に載っている、怪しいパワーストーンの広告で、宝くじが当たりました!と、半裸のオッサンが万札まみれのバスタブに両手に美女を抱えた、あのよくある写真。半裸のオッサンがジョニーの顔に容易に置き換えられる。正直、価値が見いだせないので行きたくなかったのだが、主人がどうしても行きたいとの事で私も一緒に参加させられた。過去4年間で、無料のイベントや値段の安いレクチャーも含めて、ジョニーの講演には少なくとも10回以上は参加している。教祖に支払った代金を合算すると、安めのサロンでマXコからもう毛が生えてこなくなるくらいツルツルに脱毛出来る値段になるかもしれない。オッサンの訳の分からない50代真剣しゃべり場とマXコ永久脱毛、脱毛の方が幾分か合理的でクリーンではないか。

例の講義中も、私は内心「壇上から物言い上がってエラそうに」と思いながら、時計ばかり眺めていた。しかし、周りの生徒や参加者は洗脳されているので、目を輝かせてレクチャーを聴いている。そんな中で一人うたた寝をする自分、我ながらパンクである。

私が最後に参加した教祖の講義が、ちょうど東北大震災の直後だった。

あの大震災直後の不安感というか、復興の役に立ちたいのに役に立てずにもどかしく、どうしていいのか分からず、自分の不甲斐なさに苛立ちを感じていた人も少なくないはず。私は日本に住んでいないので、更に出来る事が限られていた。飯の種である仕事を辞める訳にもいかないので、結局寄付くらいしか出来なかった。

このスカスカの頭を捻り出して考えついたのが、教祖の講義の日、受付に義援金ボックスを設置することだった。教団幹部に設置に関してお願いのメールをしてみたものの、「宗教法人で登録しているので、寄付金を募る事は法律で禁じられていて出来ない。」と返答がきた。納得いかなかったが、違法になってしまうのであれば仕方がない。何から何まで、全く使えない団体である。例の教祖の講義の中でも未曾有の大震災について触れたものの、特に復興を促す発言は一切なかった。それこそ、絶大な影響力のある教祖なんだから、復興支援を示唆してくれれば、盲目的な信者は即座に寄付なりなんなり、行動に起こしてくれたはずなのに。ちなみに、生徒の何人かは部屋にジョニーの写真をフレーム付きで飾っているほど献身的だ。

ちょっと試してみたくなって、講義の後に個人的にジョニーに質問しに行ってみた。

私「故郷の人達が苦しんでいて、私に出来る事は寄付くらいしかない。この不甲斐ない気持ち、苛立ち、どうしたらいいと思います?」

教祖 “So, do something about it.” 「じゃ、何かやればいいんじゃない?」

出来る事はやった結果の質問やろ、人の話聞かんかいハゲ。

恐らく、ジョニーに取っては私は名もなき雑魚キャラなので、相手にするに値しないと判断したのであろう。私の話がまだ途中なのに、より彼に傾倒している熱心な生徒が質問に来ると、私の存在は完全に無視され、そそくさと別の生徒の方へ行ってしまった。他の生徒達は、ジョニーはフェアな人間であると口を揃えて言うのだが、少なくとも私に取ってはフェアな人間ではない。

余談であるが、この義援金ボックスの設置の件、私の通うヨガ教室にお願いしたところ二つ返事で承諾してくれた。

2週間くらい後に担当者・メリッサ(仮名)からメールが来て「寄付金箱じゃ、らちがあかないわ。ってことで、キルタン・ナイトを開催する事に決めたの。参加費用を一人10ドルにして、義援金を集める。良いアイデアだと思わない?腕の良いミュージシャンも、もう既に揃っているわ。フライヤーも我がスタジオが誇るデザイナーに頼んであるからね。」

※キルタン…マントラ(ヨガの呪文)を音楽に合わせてチャント(詠唱)する瞑想の一つ。輪になってサンスクリット語で皆で歌を歌う、といえばなんとなくお分かり頂けるだろうか…。

私は、メリッサの行動の早さと思いやりに感銘を受けてしまった。日本人じゃないのに、日本復興の為にここまでしてくれるなんて…。仕事を理由に大した事をしていなかった自分が恥ずかしくなってしまった。

キルタン・ナイトは言葉にならない位に感動的だった。ヨガ教室に通う生徒と先生、スタッフが総勢30人近く集まってくれた。以下、昔のミクシーの日記より抜粋

ボーカルの兄さん「僕がこの話をメリッサから聞いてから、イベント決定までは話が早かった。とにかく、自分の用事は後回しにしてこのイベントを最優先に準備しなければ、と思って今日に至ったんだ。日本の被災は、決して他人事とは思えない。世界は一つで、僕らの一部である日本の痛みは僕らの痛みでもある。皆で祈りを捧げよう。」

インドの箱みたいな楽器の兄さん「平穏な生活が送れる、今、僕らにある幸せに感謝しよう。今日、ここに集まった皆の日本を救いたい気持ちは一つ。」

勝手に日本を代表してバンドメンバーとメリッサにお礼を言った時、逆に彼らが「今日は来てくれてありがとう。」と先に言われた。主催者のメリッサもバンドメンバーも参加者も、困った時に手を取り合うのが「当たり前」だと考えているらしく、お礼を言う私を不思議そうに見ていた。無論、偽善なんて一切感じなかった。

私は、この人達の優しさに無償の愛に、宗教の本来あるべき姿を目の当たりにした。どっかの教祖とはエラい違いである。このヨガ教室だけでない。昔、友達に連れられてキリスト教の日曜日のミサに参加した事がある。その時に出会ったクリスチャンの人達も穏やかな良い人達ばかりだった。後ろから光が差してるんじゃないか、と思うくらいに皆優しい。私は自分の宗教が何なのか、いまいち分からないのでお祈りは控えます、と言っても嫌な顔一つせずに理解してくれた。もちろん参加費用なんて一切徴収されない。任意の寄付なのだ。日本のお寺や神社も、お布施金に関しては任意である。

教団の年会費、ミーティングやイベントの参加費用の高騰に主人もうんざりし始め、徐々に興味を失っていった。最近は「みんな、結構洗脳されているよね。」と口にしている。一時期は年会費を多く払ってレベル・アップし、教祖の教えの深くまで入り込もうかどうか悩んでいたとは到底思い難い。主人にまともな感覚が残っていて胸を撫で下ろしたまでだ。有料イベントやインターネット・ストリーミングがある度にハイレベルな生徒(教祖のお膝元)から電話で参加を促されていたのだが(例の仕事三つ掛け持ちで逃げていた。)、最近ではもう電話すら掛かってこなくなった。

しかし、この教団を通じて知り合った友達はいまだにプライベートでも仲良くしている。ジョニーの教えは抜きに、ピクニックをしたり、ご飯を食べに行ったり、映画やクラブに行ったり、良い遊び仲間が出来た。

教祖の教えの一つに、「エゴを捨てて謙虚に生きろ。」とある。

ジョニー自身がエゴイズムのかたまりである事に気付く日が、一日でも早く訪れる事を願ってやまない。

※プライバシー保護のため、一部フィクションを用いております。相手は新興宗教です。私はまだ死にたくありません。ご了承下さい。

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