アメリカと日本、働く概念の違い

念願叶ってアメリカにあるアメリカの会社に仕事が決まり、約一ヶ月。

小さなカルチャーショックを受けながら、忙しくも楽しく仕事をさせて頂いている。

過去の記事をご覧になって頂ければお分かりのように、私は過去3年、ニューヨークにある日本のブラック企業で働いていた。なので、アメリカの会社ののんびりした雰囲気があまりにも衝撃的だった。9時ギリギリに出社して、夕方5時きっかりにオフィスを出る。5時になったらキリが良いところ、5分前になったら帰り支度をする。

初日、8:30AMに出社した際、オフィスのドアが開いていなくて入れなかった。翌日から、少し遅めの8:45amに出社すると、早朝シフトの人に「あなた、いつも早いわね!」と言われた。

8:30am 出社

8:35am 朝ご飯食べながらメールチェック、NY TimesとYahoo Japanのニュースチェック

9:00am 就業開始

このオーエル時代の習慣が身に付いてしまい、ギリギリに出社できない体になってしまった。

あと、未だに5時キッカリまで仕事をする癖が抜けない。

もう一つは、経理のおばちゃんが新人の子連れてきた。と思ったら娘さん(小学生)だったのだ。まず、子供を連れてきても寛容な会社にも驚いた。前の会社だったら、「公私混同するな!」と野次が飛んでいたに違いない。恐らく、ベビーシッターの都合がつかなくなったのであろう。しかし、この子供、配送部署の仕事をヘルプしてくれていた。会社も人手不足で困ってるので一石二鳥。それにしても良く働く子供で、文句も言わず、静かに一日中仕事してくれていた。ご両親の育て方、実に素晴らしい。生意気な使えないインターンより、この子雇った方がいいんじゃない?よそでもきっと重宝されるであろう。

また、アメリカのオフィスの人達は就業中はフル回転なのだ。一切気を抜かずに仕事に励む。

疲れたら時間を決めてコーヒー・ブレイクを取る。オン・オフの切り替えが素晴らしい。

日本の会社に居た時の、お友達残業や私用インターネットで時間を無駄にして結局ダラダラ残業、なんて事は一切ない。まあ、これは私のボスがしっかりしている人なだけなのかもしれないが…。

今、正に私が直面している困難が、「自分をアピールすること」なのだ。

前にならえ、右向け右、出る杭打たれるの三拍子が揃った戦時中の日本の教育をブラック企業で仕込まれた私は、ボスの顔色を伺いながら、ボス以上に出しゃばらない態度が反射的に出てしまっているらしい。

新卒の頃、まだ若かった私は「私が会社を変えて良くする!」というパッションに溢れていたので、あれもしたい、これもしたい、こうやったら良くなるんじゃないか?というアイデアを上司にアピールしては真っ向から否定され、苛立ち、歯向かい、上司やその他幹部とケンカしまくった。しかし、最後には諦めて受け入れ、ゴマを擦ってヨイショし、本音と建前で対応するようになった。会社幹部を「裸の王様」扱いするのが最善策だと学んだのだ。そして、気が付いたら3年経っていて、最後には完全に自分を見失い、睡眠薬が常備薬となってしまった。

私がブラックで学んだ協調性、謙虚な態度、時間厳守は今の会社でとても重宝されている。

しかし、自分自身のキャリアや昇級を考えるとなると、自分をアピールするという事は何よりも大切なのだ。これは、上司や社長に対するおべっかではない。私が新卒の時に持て余していた、怖いもの知らずの仕事への情熱なのだ。

私の前の上司は、自分で大きな仕事をやりたい人だったので、私に仕事を与えてくれなかった。一日5時間くらい何もやる事がなく、瞑想トランス状態に陥る事もしばしばあった。痺れを切らした私が、仕事をもっと与えて欲しい、と頼んでも「ロクな仕事もできない癖に、生意気言うな!」と、私のデザインを見た事もない会社幹部に怒鳴られた。私は、仕事をする為に会社に来ているのに、仕事が与えられない。周りからは楽で良いね、と言われていたのだが、一日中何もする事がないのはこの上なく辛いのだ。私用インターネットはもちろん禁止、見飽きた会社のHPや取引先のHPを何度もリロードしていた。そう、私は2年間「社内ニート」だったのだ。

習慣というのは恐ろしい。私は、ボスの仕事を取ってはいけないと思っていたので、彼女から新しい事を学びたいと言うのを控えていた。実際は、彼女はとても忙しく、時間があれば是非とも私に新しい仕事を覚えてこなせるようになって欲しいとの事だった。

彼女からの言葉で「あなたはとても仕事が早いし写真も素晴らしい。前のカメラマンも腕利きだったけど、あなた程の量はこなせていなかったわ。皆、あなたの写真を気に入っていて絶賛している。カタログは毎日確実に良くなっているわ。ただ、自分のした仕事をしっかりと周りにアピールしないとダメよ。そうじゃなきゃ、あなたが頑張っている事を誰も分かってくれない。細かい事でもいいの、撮影が終わったら報告のメールを一通入れるだけでお互いのコミュニケーションにもなるし、あなたの仕事ももっと評価されるのよ。」

とてもありがたい褒め言葉である。過去3年間、無能・給料泥棒と呼ばれ続けていた私からすると、嬉しいを通り越して驚きだった。

しかし、わざわざ周りに働きかける大袈裟な仕事は何一つしていないと思っていた私は、これを聞いて動揺した。当たり前の事を当たり前にこなしているだけなのに、それを自己アピールの一部としてプレゼンテーションし、自分自身への評価につなげなければならないのだ。他の仕事に関しても、もっと出しゃばるべきなのであろう。しかし、私にはこの一歩が踏み出せないでいる。ボスは何も感じていないと分かっているのに、反射的に顔色を伺い、周りとの調和を最優先してしまうのだ。身に付いてしまった、「出る杭」にならない習慣がどうしても抜けず、日々葛藤している。

私は、根本的に自分に自信がないので、元々、自分を良く見せるのがこの上なく下手なのだ。今となっては自分を良く見せる事が必然となってしまったので、自分の仕事をアピールするときは多大なるプレッシャーを感じ、吐きそうになりながら上司や社長に物を言う。きっと、声が震えている。

かといって、その他もろもろのアメリカ人の如く、大した仕事も出来ないのに根拠のない自信に溢れていると、これはこれで迷惑で煙たがられる。ブラック企業で学んだ協調性と自分を上手にアピールして仕事をこなす力、この二つのバランスが上手に取れるようになれば、私もアメリカ企業では一人前になれるのかもしれない。

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