クリスマス・イブの悲劇

「今年もサンタさん来てくれはるかなあ?」
「ええ子んトコにしか来はらへんさかいに、あんたのトコには来はらへんのちゃうか。」
「うち煙突ないのに、どこから入ってきはるん?」
「…窓や。」
まだ小学生だった頃、幾度となくこんな会話を両親と交わした。

だが、その年は一味違ったクリスマスイブとなった。

恐らく、小学校3年生だった頃の話。

ご存知の如く、アメリカのようなクリスマスホリデーは日本にはない。
両親は容赦なく仕事だったが、子を思ってか、しっかり定時で帰ってくれて、
家族でクリスマスのお祝いをする。(別にキリスト教徒じゃないけど)

食卓に並ぶのは、骨付きの照り焼きチキン、サラダ、コーンスープ、祖父が作った大根のたいたん(煮物)、エビチリ、白ご飯、味噌汁、奈良漬け、デザートにイチゴのショートケーキをワンホール、おつまみ用ハッピーターン、父親用の焼酎、などという、ある意味国際的なの豪華料理が、ちゃぶ台(もちろんコタツ)に並んでいた。いや、汁物、二つもいらんやろ。

ショートケーキにろうそくを立てる祖母、誕生日でもない弟がそれを吹き消す。突っ込みどころ満載だが、そこは敢えて誰も突っ込まない。

ここまでは毎年恒例の光景。

デザートもそこそこに、テレビを見ながらリラックスタイム。
家族団らんのひと時に突入。
祖母がそれとなく、「サンタさん来はるん、楽しみか?」と私と弟に尋ねてきた。若かった私は、他人を疑うことなど知らなかったので、サンタクロースの存在を心から信じていた。実際、サンタクロースに手紙を書いて、枕元に置いたりと、とても健気な小学生だった。その年も、私はサンタクロースが窓から侵入してくる光景を想像しては、わくわくしていたのだ。私と弟は、祖母にいかに楽しみであるかを熱く語った。

和やかな時は過ぎ、時計は夜十時を回る。
子供は眠る時間となった。弟は既に眠かった様なので、先に寝床で就寝、熟睡。
眠くない私も、半強制的に居間から追い出されることになった。

寝床に向かう、階段を上っている時、大人たちの話し声が障子越しに聞こえた。なんせ、障子、会話が丸聞こえ。
「いやー、それにしても、あの子らはまだまだ素直でええ子やな。すっかりサンタの存在信じてからに。」と祖母。
私は、一瞬何が起こったのか分からなかった。盗み聞きを続ける。
「ほんまに、すっかり信じ込んでしもてるさかいになあ。」と、祖母。
二度目の祖母の発言で、私は確信した。サンタクロースは存在しない。
「まだまだ子供やなあ、ほんまに信じてるさかいになあ。」
上記の如く、祖母は三回以上同じような発言を繰り返していた。
見事にやらかしてくれた、おばあちゃん。

すっかり肩を落としながら、寝床に向かう私。
寝床に就く階段を上りながら、大人の階段も一つ昇ったと言う訳だ。
現在の私の人間不信は、恐らくこの頃から始まったように思える。

翌朝、例の如く欲しかったプレゼントとサンタからの置手紙が枕元に。
「みてみてー!サンタさん、手紙の返事と、うちが欲しかったもんくれはったでー!!」

ハリウッド女優ばりの名演技を、その後、二年ほど続けたのは、言うまでもない。

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